「人を動かす」デール・カーネギー 訳:山口博

 自己啓発本の元祖と言われる本ですが、今まで読むのを躊躇っていました。

 なんかこの表紙からして立派そうなおじさまの写真で、すっごいカタい道徳本だと思っていたからです。

 しかしいざ読んでみると楽しい楽しい。
 これは翻訳者の力も大きいとは思うのですがユーモアに溢れた文体で、所々声を上げて笑ってしまう程。

 そして書かれた年代的(1937)に、内容も古くさい上に説教臭いのではないかと思っていましたが、それも無し。

「良い」とされて来た事は、やはり時代を超えていますし、説教臭い事それ自体が、この本で書かれている「やってはいけない事」であり、その辺が徹底されているので、読んでいて気持ちが良い。

 そして何より凄いと思わされたのは、豊富な例え話や過去の事例。

 テーマの提示が2割だとすると残り8割はそれらに割かれ、良質な短編人生物語り集として読んでも十分な満足感が得られます。

 この様な本を読むと、難しい事を例え話などを交えて簡単に語る事の出来る人こそが、頭の良い人なんだなと実感出来ます。

 中学生、いや小学生高学年レベルの国語力でも十分に読める文体も素晴らしい。

 手にとって良かった本です。

催眠術、自己暗示について2 緊張とは。

 催眠術や自己暗示の基本は、緊張を解く事です。

 この術者は、私に何か恐い事をするのではないか。
 暗示にかかって取り返しの付かない事になったらどうしよう。

 その様な警戒心が、緊張という反応として身体に出て来るのです。

 警戒すると、人は本能的に身構えます。
 それは太古の昔からある、自分を守るための本能。

 戦うとき、敵に一番接触しやすい手足の先からは、怪我をした時の出血を抑える為に血液が引きます。緊張した時に手足が冷たくなるのはこの為だと言われています。
 集中するため視野は狭窄し、目の前の敵以外が見えなくなります。
 そして体中の筋肉に力が入り、様々な衝撃を跳ね返そうとします。

 これがいわゆる緊張状態です。

 緊張というと、いつも悪い事の様に言われがちですが、これから戦いに赴くという時には程よい緊張があった方が良いのです。

 例えばこれからサッカーの試合に出るという時、緊張状態を保つとテンションが上がり、大きな力を発揮できます。
 ライブ演奏、重要なプレゼンテーションなどもそうです。

 勿論、緊張が強すぎると身体や思考が思う様に動かなくなりますので、自己コントロールにより「程よい」緊張を保つのが大切です。

 緊張は闘争本能と結びついているので、基本的に目の前の相手を拒絶します。
 催眠術にかからない人は、緊張による催眠への拒絶が原因である事が多いのです。

 では緊張を解くにはどうしたら良いのか。
 身体の力を抜いてリラックスすれば良いのです。

 それは、「体の力を抜く」事です。

…前回と同じ引きになっちゃった…つづく。

「える・えるシスター」邪武丸 1〜3巻

 ノッポで怪力のヘタレ妹と、変態リビドー全開の生徒会長姉とのドタバタ百合ラブコメ
 その魅力は、読んでいる顔が終始ニヤニヤしてしまうラブラブっぷり。

 登場人物は女性しかいないのですが、皆一様に惚れっぽく可愛いモノに目がありません。
 女の子同士がひっつくのがみんな大好きなので、事ある毎に「きゃーっ!」とか言って一斉にときめいちゃったりします。

 毎回毎回学園に黄色い声が響き、それだけでも幸せな気分です。

 そしてこの作品の面白いところは、尻上がりにキャラクターが立ってくる事。

 1巻の巻末にはオマケとして読み切り時の作品が掲載されていますが、正直いってそれほど面白いという訳でもありません。

 ところが連載開始となると大きく設定を変えてきました。

 特に読み切り時には気合いが入りすぎたのでしょう、ゴチャゴチャとした読みづらい感覚を受けたレイアウトをはじめ、絵柄や設定もスッキリとして見違えるほど面白くなり。

 作者の方は相当煮詰め直して努力されたんだなあ、と感じました。

 また連載中において、これは伸びないと思われた設定はスッパリ切り替えて、別人じゃないかと思われる程キャラ設定を変更してしまう思い切りの良さ。
 こうすれば面白くなる、ああすれば面白くなると、次から次へと設定が後付けされて行きます。

 そうなると当然整合性とかがとれなくなる事も出て来ますし、展開に強引さを感じる事もありますが、そんな些細な事はお構いなし。

 結果として面白くなれば良いんです。

 作者さんはこのポリシーのもとに進んでいるらしく、事実何かを変更すると必ず面白くなって返ってきます。

 こういうのを見ていると、コメディマンガって勢いなんだよな、とか改めて感じさせてくれます。

 次から次へとクセの強いキャラクターが出て来て引っかき回しますが、誰一人悪意を持ったキャラが出ないのも魅力。
 みんなの為に良かれと思って暴走した挙げ句の空回りとか、なんか企んでるっぽいキャラが出ても、実は他のキャラを助けてあげようとしていたりとか。

 全員が善人ばかりなりで、安心して楽しめます。

 そしてドタバタコメディもただ暴れるだけではなく、友達を作りたい、腐女子趣味を隠したい等、毎回必ず葛藤が描かれています。

 コメディってこうあるべきだよな、とか感じてしまいました。

 百合好きの人には勿論ですが、学園コメディとしても秀逸な出来なので、万人にお勧め出来ます。

 是非お手にとってお楽しみ下さい。

催眠術、自己暗示について1 「催眠オナニー入門」を買ってみた。

『さあ、やってみよう 催眠オナニー入門(CD付)』という本を買ってみました。

 もともと催眠術や自己暗示には興味があり、自分でも色々と試してはいたので正直内容的には今更なんですが、この様な本が出たというだけで意味があります。

 表紙を描いている紺野あずれさんのファンでもありますし、これはもうご祝儀として喜んで買わせて頂いた次第です。

 しかし興味があるとは言え、本格的に誰かについて勉強したわけでもなく、基本的には書籍や巷に売られている催眠音声などからの独学。

 そして私自身、自己暗示により深い催眠状態に入った事はありません。

 そもそも私が初めて催眠術というものにふれたのは、昔たばこをやめる、という趣旨の催眠音声を買ったからです。

 当時の私はヘビースモーカーで1日に40本は吸っており、さすがにコレはまずいだろう、と色々な禁煙法を試していたのですが、これもその一つ。

 結論から言いますと催眠にも掛かりませんでしたし、たばこも止められませんでした。
 しかしその催眠テープを通して、私にとってとても有益なスキルを手に入れる事が出来ました。

 それは、「体の力を抜く」事です。

つづく

コミック百合姫S Vol.1

 本家と比べ、よりライトな絵柄と内容になり、ぶっちゃけ男性向け萌え百合雑誌に割り切った構成でスタートしたコミック百合姫S

 その中から今回は、私の大ファンである作家さん二人にスポットを。


☆ 「interface」玄鉄絢

 この方の見所は非常に洗練された絵柄と、そのシャープで繊細な線によるスタイリッシュな少女達のファッション。
 服飾デザインへの拘りは偏執的なまでで、主役の娘など本編16ページの中で8回もお着替えしています。

 黒板に人形を描き「これはただの入れ物」「そしてこれは私」と、素敵なハート形の焼き物をプレゼントしてきた謎の少女。

 彼女を探す主人公、そして彼女と何か関係のありそうな女教師。

 ラスト、「えなちゃん」の心を身に付けた主人公が、女教師に「私に言わなきゃならない事がありますよね」と迫るシーンが微笑ましく、あの様な結末を迎えたというのに、とても心が温かくなります。

 ほぼ全作品通してそうなのですが、この作者は説明を徹底して省きます。しっかりと読み込めばあちこちに伏線やらメタファーやらが挟み込まれているのですが、軽く読もうとするとさっぱりです。
 この辺の「これくらい読み取れるよね」みたいなスノッブさが、人によっては嫌みに見えたりするでしょうし、またオシャレに感じたりもします。

 好みは分かれるかとは思いますが、私は非常に好きです。


☆「オトメキカン グレーテル」すどおかおる

 対するこの方は、もうストレート。絵柄もラフでストーリーもベタ。
 しかし、このペン先からグネグネと蟲の様に溢れだしてくる暗黒のレズ好きオーラは、他の追随を許しません。

 そう、百合と言うよりはレズ。
 この方の場合はまず肉欲あり、なんですね。

 勿論心の結び付きもあるのですが、相手の子を好きになったら、ロザリオを渡してとかまだるっこしい事なんかしてないで、とっとと組んず解れつイチャコラしたい、という何というかもう直球。

 最初にラフな絵柄だ、とか書きましたが、その理由は手抜きではないと思います。
 逆にこれはどう見ても、少女達のイチャコラしてる絵を描きたい、描きたい、という欲求から来る勢いにペンが上滑りしてるとしか見えません。

 一応サイキックバトル物(うぷぷ)っぽい体裁は取っていますが、そんなのはイチャコラさせる為の道具に過ぎず。
 また、この人の描く少女達のイチャコラは、微妙に親父臭いのも特徴(笑)。

 好きになったら一直線。細かい事はどうでもいいからイチャコラべたべたする!

 連続物の1話なのでまだ判断は出来ませんが、オーラはビシバシ伝わってきます。
 代表作は「彼女のカノジョ」。単行本化は…どうなのでしょうか。

 両極端の作風ですが、どちらも大好きです。

電撃!!イージス5(谷川流)

 ハルヒで有名な谷川流さんのノベルです。

 これは雑誌「電撃萌王」に連載されていた作品なので、基本的に1話完結で実にシンプル。

 簡単な粗筋としては、祖父の実験により次元に亀裂が入り、そこから現れる謎のEOSと呼ばれるモノを退治する為に集まった5人の少女達と暮らす事になった主人公の、SFラブコメ

 ハルヒの小説は未読なのですが、アニメの展開を見るに、小説は結構複雑な心理描写やSFガジェットが幅をきかせている事は解ります。
 が、この『電撃!!イージス5』は5人の女の子達のキャラクターを前面に押し出し、徹底した萌え萌え娯楽小説になっています。

 まさにライトノベルと呼ばれるにふさわしいキャラクター小説で、元気少女、天然少女、ツンデレ少女、泣き虫少女、無表情少女、とズラリ揃っており、これだけ並べられればもうお腹いっぱい、と感じるのですが、キャラクターが「記号」ではなくしっかりと生きて考えて生活している。

 この点が大きく評価されます。

 例えば掛川あろえ
 この娘はいわゆる天然少女なのですが、お手軽な何も考えていない痴呆少女ではなく、何かとトラブルの多い5人の中で、その暖かい笑顔で仲裁役に回り、そのため無意識にストレスが溜まり倒れてしまう、というエピソードもあり。

 他のキャラクターの掘り下げも相当練られています。

 イラストを描いているのは後藤なおさん。
 ラノベの売れ行きは挿絵画家で決まる、と揶揄される程ですが、とにかくこの方の描く女の子は可愛い!
 特に服飾デザインや色彩感覚が抜群で、カラーイラストの美しさは目を見張る程で必見です。

 作者も良い意味で相当肩の力を抜いている様で、スラスラと楽しく、それでいて何度でも繰り返して読めます。

 深いテーマや感動を求める方にはお薦め出来ませんが、辛い事があった時、忙しい毎日に疲れた時、ヒョイと読んで楽しむ。

 そんな萌え萌え娯楽小説でございます。