「考えない練習」小池龍之介
自己啓発本などでは、常に思考を絶やさずに考える癖をつける事を提唱しておりますが、これはその逆。
怒りや欲など、混乱した思考に悩まされている人に向けた、考えない練習の本です。
無論、日がな一日ボーッとしていろという事ではありません。
その瞬間に考えるべき「正しい思考」をするために、無駄な思考を排除しよう、という教えです。
私も昼間はなるべく頭を働かせて思考する癖をつける様にしていますが、それで困るのは夜、寝る時です。
どうしてもアレコレと考えてしまい、ベッドに入ってから寝付くまで早くて40分、遅くて3時間ほどかかる事もあります。
だから考えるのをやめようと焦るあまり、考えるのをやめようと考え込んでしまうというスパイラル。
そこでこの本を手に取った次第です。
とても良い本でした。
一朝一夕には体得出来ませんが、少なくとも自分の思考にどういう癖が付いているかが何となく解るようになってきました。
人が考える事を苦痛に感じる時。それは大きく分けると2つになります。
過去を悔やむか、まだ見ぬ未来を心配するかです。
だからそれらを避けるには、今現在に集中すれば良いという事になります。
寝ようと横になったら、自分の呼吸する音だけに集中する。
重力でベッドに押しつけられた背中部分の感覚だけに集中する。
意識して何も考えまいとすると、ジリジリとした焦りが確実に来ます。
だから、いま現在感じている感触にだけ意識を集中させるという事です。
仕事でキーボードを打っているのなら、指先に意識を集中させる。座っているのなら、お尻にかかる体重の重さに意識を集中させる。
考えないという事は、頭を空っぽにするという事ではないんだという発見は、実に新鮮でした。
著者は仏法者。
仏教の教えをベースにおいてはありますが、文章が非常に穏やかなので説教臭さがありません。
巻末では「進化しすぎた脳」などで有名な神経科学者、池谷裕二さんとの対談もあり、宗教と科学との接点が見られて、これもまた興味深いものがありました。
自己啓発本と平行して読むと、バランスを保つのに良いかと思いました。