「ゆるゆる」たかみち

 たかみちさんの描く画からは全く邪気が感じられないにも関わらず、描かれる女の子たちにエロさを見出してしまうのは、これは受け手の心の中にそういうものがあるからでしょう。

 だから例えばアグネスとかがこの画を見たとしても、「あら〜可愛い女の子ねぇ〜」と思う筈。
 もしこの方がロリコン雑誌の表紙を何年にも渡って描かれているのだという情報が事前に与えられていれば、烈火の如く糾弾するのでしょうがね。

 そしてこの様に受け手によって画から受ける印象が変わるという事こそ、芸術性が高いという事だと私は思います。

 時として優れたイラストレーターがコミックを描くと途端に微妙になってしまう事もあるのですが、この作品はその辺が無くするっと入り込めました。

 それは恐らく描いている本人に、自分はストーリーで語る人間ではなく画で語る人間なのだという自覚があるからだと思います。

 その辺が最も色濃く出ていたのが、第5話「待ちあわせ」。

 仲良し三人組の女の子、ハルカ、みさき、ユキ。
 みさきは朝の海岸でハルカとユキを待っているのですが、午後5時の待ち合わせを午前5時だと間違えてしまっていたというお話。

 一応直後にハルカが来て、彼女も朝の5時だと勘違いしていたというオチもあるのですが、特にその辺は大した事でもなく。

 凄いな、と息を飲んだのは朝の海岸の風景。

 日が射す前の暗い海辺の上空に、先んじて大きな雲の一部にだけ光が入射している表現。
 時間が経つにつれ日光がみさきにあたるのですが、入射角が鋭いので、ぼんやりとした朝焼けの光となっています。

 冷たい空気と日の光。そして足下で遊ぶさざ波。

 五感を刺激する画です。

 全編フルカラーで描かれたこのコミックにおいて、たかみちさんの魅力が最も強く出ている1話。

 恐らく作者は朝の風景を画にしたかったため、この様なお話にしたのでしょう。
 この辺、テーマやプロットを先行して考えるシナリオ畑の人とは違う所です。

 自分は絵描きなんだ、という強いプライドと自信が感じられます。

 フルカラーコミック128ページもあって1143円。
 値段もリーズナブル。

 就寝儀式用にして、寝る前に眺める事にします。

PS.
 「チェンジH」とかいうTS(トランスセクシャル)系雑誌のチラシが挿まれており、何だこりゃとか見てみると、男装少女のフルカラーコミックをこちらにも描かれるとの事。
 うえーい。解りましたよ、買いますよw