「いやな気分の整理学 論理療法のすすめ」 岡野守也

 いやな気分になったらどうするか。

 論理療法では「ABC理論」という考え方をするそうです。

A=「嫌な気分を誘発、活性化するような出来事」
C=「その結果、落ち込んだり腹が立ったりする」

 普通はA→Cという考えに流れます。
 しかし実はその間にBというものがあるというのがポイント。

B=「個人による受け止め方、考え方」

 Aという出来事を、Bという受け止め方を経て、Cという感情が生まれる。

 だから同じAという出来事が起きても、Bの違いにより感情が爆発する人もいれば、平然としていられる人もいる。

 結果であるCをより良い方向に持って行く為に、Bを修正しよう。
 それには、自分自身に「論理的な」問いかけを「積極的に」すれば良いのだ、というものらしいです。

A(アクティベイティング・イベント)
B(ビリーフ)
C(コンシーケンス)

 詳しくはこの辺を読んで頂くとして、面白いなと思ったのは、対象者に対してかなり積極的に働きかけるという事です。

 この本を読む前に「プロカウンセラーの聞く技術」という名著も読んで大いに感銘を受けたのですが、こちらはひたすら聞き役に回り、対象者の怒りや不満を吐き出させて気持ちが収まるのを援助しよう、というタイプ。

 カウンセリングというと、やはりこちらが主流の様です。

 しかし論理療法は、もっと積極的、能動的に対象者に働きかけ、考え方そのものを変えてもらおうというものだそうです。

――希望の大学に入れなかった。もう全てが終わりだ。
「大学に入れなかったら、君の全てが終わるというのは論理が破綻している」

――あいつは嫌な奴だ。腹が立つ。
「君が腹を立てる事により、損をするのは誰だ? 君自身だ」

――世界のどこかで食べ物も食べられずに死んでいく人がいる。なんて私は無力なんだろう。
「可能ならばすぐにそこへ行き、彼らを助けてあげよう。しかしそれが出来ないのならば、忘れてしまいなさい」

 一見すると人の神経を逆撫でするような物凄いやり取りの様ですが、これは解りやすくする為に、極端な書き方をしました。

 実際はしっかりと信頼関係を結びつつ、慎重に行う筈です。

 つまりは、「絶対に〜でなければならない」という硬直した考え方を、論理的な問いかけを突き詰める事により、「〜だといいな」という柔軟な考え方に変えて行こうというものです。

 そしてこれは、自分自身に問いかける場合にかなり有効だと思います。
 特に我々の様に理屈が大好きなオタクにとっては、結構ゲーム感覚でやれるのではないかと思った次第です。

 特に最近はぐぐるにお願いすれば、どんな答えでも立ち所にポーンと出てくる時代。
 だからつい安易に答えに飛びついてしまい、「考える」という事を最近しなくなったと自分でも反省していた所です。

 悩んだ時以外にも、常に考える癖をつけておこうと改めて思いました。